logwが「さくらのVPS」を使い続ける理由
最近はSREやセキュリティエンジニアとして活動しており、その一環でログの重要性を学んだり、日々サーバーと向き合ったりしています。
現代のWeb開発、特にインフラの世界では、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)といったクラウドサーバーが主流です。多くのエンジニアが技術向上のため、あるいは実務で使うために、個人の開発環境でもクラウドを利用しています。
しかし、私が運営しているこのブログ『logw』では、あえて昔ながらのVPS(仮想専用サーバー)である「さくらのVPS」を使い続けています。
「なぜ今、クラウドサーバーではないのか?」
今回はその理由について、現役エンジニアの視点からコストと実利の両面で本音を語ってみたいと思います。
結論:私のサイトにクラウドは不要。さくらのVPSで十分な3つの理由
いきなり結論から申し上げます。私がさくらのVPSを使い続ける理由は、現状のサイト規模において、クラウドサーバーを選ぶメリットがほとんどないからです。具体的には、以下の3つの理由に集約されます。
- 圧倒的なコストパフォーマンス: 月額費用が半分以下で済みます。
- オーバースペック: 私のブログのアクセス数では、クラウドの高度な機能を全く活かせません。
- 学習メリットの薄さ: よく言われる「学習のための投資」という考え方も、費用対効果を考えると実は限定的だと感じています。
「学習・経験のため」という考えを、私はどう捉えるか
クラウド利用を検討する際、「実務経験や学習のために」という理由は大きな動機になります。もちろん、それを否定するつもりは全くありません。ただ、私のケースに当てはめて冷静に考えてみると、その効果は限定的ではないか、と感じています。
考え1:サーバー構築・運用経験について
確かに、EC2やGCPのインスタンスを立てる経験は大事です。しかし、AWSでよく使われるAmazon Linuxや、GCPで選択できるRocky Linuxは、結局のところ普段から私が使い慣れているRedHat系のOSです。基本的なコマンドに大差はなく、クラウド特有の操作を覚えるだけのために、毎月高い費用を払い続ける価値は低いと考えています。
考え2:「仕事で使うため」という先行投資について
「いつか仕事で必要になった時のために、個人のブログで設定に慣れておく」という考え方もあります。ですが、現実問題として、サーバーの初期構築のような一度きりの設定作業は、1年も経てば忘れてしまうか、クラウド側の仕様が変わっていることがほとんどです。
いざ仕事でやるときに「なんか見覚えあるぞ」となるかもしれませんが、その程度の経験は未経験と大差ありません。それならば、本当に仕事で必要になってから、AWSの12ヶ月無料利用枠などを使って集中的に学んだ方が、よほど効率的ではないでしょうか。
考え3:CDN、DNS(Route53)、メール送信(SES)等の周辺サービスについて
CDN(コンテンツ配信ネットワーク)は、大量のアクセスを捌く上で非常に重要です。しかし、現在の『logw』は月間アクセス数が1000にも満たない弱小ブログ。この規模でCDNは明らかに不要です。
また、Route53(DNSサービス)やAmazon SES(メール送信サービス)も便利なサービスですが、DNSやメールの仕組みといった技術的な本質を理解していれば、AWSの特定サービスに固執する必要はない、というのが私のスタンスです。
【現実】AWS vs さくらのVPS:圧倒的なコスト差
なによりも大きな判断材料は、月々の運用コストです。
例えば、AWSでよく使われるt3.microインスタンスと、さくらのVPSの同等スペック(メモリ1GB)プランの料金を比較してみます。(1ドル150円で計算)
- AWS:t3.micro(東京リージョン)
- 月額料金(目安):約 2,090円
- さくらのVPS:1GBプラン(東京リージョン)
- 月額料金:990円
- さくらのVPS:1GBプラン(石狩リージョン)
- 月額料金:880円
月間1000アクセスもないサイトの運営費として、この差は非常に大きいものです。コストを考えれば、さくらのVPSが圧倒的に有利です。
機能はどうか? 小規模サイトでは「やれることは変わらない」
「クラウドは機能が豊富だ」という意見もあります。確かに、DBサーバーを分離(RDSなど)したり、詳細な監視(CloudWatch)ができたりと、大規模サイトには欠かせない機能が揃っています。
しかし、個人ブログでそれをやろうとすると、コストがさらに跳ね上がります。結果として、コストを抑えるために1つのインスタンスの中にWebサーバーもDBサーバーも同居させる構成になりがちです。
これでは、構成的にVPSと何ら変わらず、クラウドのメリットを全く享受できません。
では、いつクラウド移行を検討すべきか?
もちろん、私も未来永劫VPSを使い続けるつもりはありません。サイトが成長すれば、クラウドの持つスケーラビリティや機能が必要になる時が来ます。
私の中での一つの目安は、月間アクセス数が10万PVを超えたあたりです。
その規模になれば、メモリを2GB~4GBのマシンへ増強したり、CDNを導入して負荷分散を図ったりと、様々な選択肢が生まれます。その時こそ、クラウドのメリットがコストを上回るタイミングだと考えています。
まとめ:技術選定は「適材適所」で
AWSやGCPといったクラウド技術が、現代のWebインフラにおいて強力で素晴らしいものであることは間違いありません。しかし、それは万能薬ではなく、あくまで「適切な規模と目的」で使われてこそ真価を発揮します。
個人ブログや小規模なWebサービスにおいては、機能とコストのバランスを見れば、VPSは依然として非常に合理的で優れた選択肢です。
技術の流行に流されるのではなく、自身のプロジェクトの「今」の規模と目的に本当に見合っているか。その上で、自分にとって最適な環境は何かを冷静に見極めることが、エンジニアにとって大切なスキルではないでしょうか。
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